【大企業人事の仕事(8)】処遇制度の設計
大企業メーカーの人事として
10年間を過ごす中で学んだ
「人事の仕事」についてまとめていきます。
8つ目は「処遇制度の設計」です。
1.処遇制度の設計とは
処遇制度の管理には
主に3つの役割があります。
①労働費用の総額管理
②必要な人材の確保
③社員の労働意欲の向上
②③の観点からは
当然処遇は高い方がよく、
魅力的な処遇水準にしたいところです。
一方で①の観点から
労働費用の総額にはキャップがあり、
このバランスをうまく取りながら
処遇制度を設計する必要があります。
2.処遇制度設計の進め方
2−1.労働費用の総額の決定
利益に対する労働費用の割合や
売上に対しる労働費用の割合など、
何らかの指標をもとに
労働費用のキャップを規定します。
利益や売り上げの変動に応じて
年収を乱高下させるわけにはいかないため
厳密な基準にはならないですが、
健全な支出の範囲内であるかどうか
一定の基準は持っておくべきでしょう。
2−2.現金給与と福利厚生の配分
労働費用の総額のうち、
どれだけを現金で支給し、
どれだけを福利厚生・退職金として
提供するかを検討します。
福利厚生は社員の福祉の向上を
目的としたものですので、
現金給与と異なり社員に公平に分配する
傾向が強くなります。
一方でその会社がどのような福祉を
重視するかというメッセージを
発信することもできるものです。
また、退職金は長期勤続した人に
給与を後払いするものとも言えますので、
長期勤続に対するインセンティブという
性格があります。
これらを踏まえながら、
現金給与と福利厚生・退職金の
分配を検討します。
2−3.社員区分ごとの処遇水準の検討
次に、社員区分ごとに処遇水準を検討します。
2−2で決定した現金給与に収めつつ
外部人材に対する採用競争力や
社員の昇格時の意欲向上も図れる
バランスの取れた処遇水準にする必要があります。
この際、必要に応じて
外部の専門会社に協力してもらって
社員区分ごとの市場相場も確認します。
最近であれば高度IT人材などは
他の職種に比べて市場水準が突出しているなど
社員区分ごとに適正な処遇水準を
設定する必要があります。
2−4.短期給与と長期給与の配分
最後に、社員区分ごとの処遇を
月々の給与で支給するのか、
賞与で支給するのかを検討します。
一般的に、月々の給与は
・職務等級
・職務能力
・勤続年数
などの要素で決定されますが、
大きく変動させることはなく、
安定的に支給する性格の処遇です。
一方で、賞与は
・会社業績
・個人の査定
などによって決定され、
頻繁に上下する可能性のあるものです。
処遇制度との関連も踏まえつつ、
処遇の柔軟性を確保するためにも
一定程度は賞与での支給を考えるべきでしょう。