K's blog

中国生活、人事、家事・育児、プログラミング、読書記録 など

【本】表現の技術【読書メモ】

高崎卓馬さんの「表現の技術」。

 

全体として何を言いたいのか。

どんなミッションを達成すべきなのか。 

ミッションの発見が表現の質の8割くらいを左右する。

それがどんな人にどんな風に作用するのかを想像する。

 

広告、ドラマ、小説などの「表現」について

そのイロハを解説してくれている良書。

 

直接的に表現に関わっている人だけでなく、

マネージャーや人事など、

誰かに何かを伝えたい全ての人にとって新たな発見があると思います。

 

 

250ページ弱の文庫文で 文章も読みやすいので、

1日で読みきれると思います。

 

表現の技術 (中公文庫)

表現の技術 (中公文庫)

 

 

以下印象的だった箇所を備忘も兼ねて。

 

P26

感情を動かすために絶対必要な要素、それは「オドロキ」。

笑う場合も、泣く場合も、直前に一度変化に対して驚いている。

 

P29

「起承転結」は出来事を整理するための方法。

「物語」ではない。

普段の会話でも、面白く話をする人は「結論から話を始める」。

例)起承転結に沿って話す悪い例

  昨日友達と飲んでて、居酒屋であった人と意気投合して、

  夜中まで飲んで、そこから記憶がないんだけど

  気付いたら知らない人の家にいた。

結論から話すいい例

  昨日起きたら知らない人の家にいてさ、・・・

 

P47

「観客のみが知っている未来」を作り出す。

例)誰が犯人かを観客だけが知っている中で物語が進む

観客だが知っていることを作ると、それを渡された観客は、

小さな責任のようなものも同時に渡されてしまう。

心が前のめりになり、自分が想像したように物語が

展開してくれるかどうか、

ドキドキしながら見守ることになる。

 

P70

できるだけ、登場人物の「行動」を書く。

感情を書いてしまうとそれで終わってしまう。

その登場人物ならこういう悲しみに直面した時に

どういう行動をとるのか。

例)男が一人応接室にいる。「くそう、緊張してきた」

  ↓

  男が一人応接室にいる。

  タバコに火をつける。

  が、灰皿にはすでに火のついたタバコがある。

 

P91

ドラマとは秩序を与えられた葛藤のことだ。

2時間の間、観客をトロッコに乗せて走りきれるか。

そのためには、最初の「この条件の中で」という

魅力ある問題設定が大切。

この映像をどう見るべきか、何を解決するために

このトロッコは走るのか、を明確にすることが大切。

ルールのある葛藤をきちんと設定すると、

観客は安心して不安になる。

例)移植手術をしなくては息子の命は助からない。

  けれどその金はどこにもない。

 

次に必要なのは「対立」。

敵味方という意味の対立だけでなく、

あらゆる意味で「反対側」を意識する。

例)遭難した雪山で、下山しようとするが、

  誰かが「ここで待とう」と言い出す。

一人の登場人物の中にも。

例)優しい犯罪者、魚が嫌いな寿司屋

 

物語を進行させるのは、対立がもたらす「葛藤」。

物語はシナリオではなく、登場人物の葛藤が絡み合って進む。

船が沈む、は物語ではない。それはただの事件の説明。

 時間通りにつきたくて無理をした結果、船が沈む、が物語。 

 

P99

忘れてはいけなのが、「テーマの発見」。

その広告、その映画、そのドラマは

全体として何を言いたいのか。どんなミッションを達成すべきなのか。 

ミッションの発見が表現の質の8割くらいを左右する。

実際、本当の意味の「ミッションの発見」をしないまま、

市場のシェアやコンセプトの浸透だけを

「目標の設定」と勘違いしているケースが実はほとんど。 

商品は表現の切り口を教えてはくれない。

それは商品と人、もしくは世の中との関係の中にある。

これはすべての表現に当てはまる。

極端に言うと、結婚式のスピーチもそう。

新郎の母を泣かせる、とミッションを決めたら

その内容も構成もより明確になるはず。

商品をPRする必要のない映画や小説のような、どちらかと言うと

自分を見つめて掘り下げて創作することが求められる表現でも、

それがどんな人にどんな風に作用するのかを想像することは

とても大切なこと。