K's blog

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【本】海馬【読書メモ】

脳科学池谷裕二さんと 糸井重里さんの対談本。

 

少なくとも脳の大切な機能のうちのいくつかは、

30歳を超えてからの方が活発になることがわかっています。

 

学生時代に読んで、早く歳をとりたい、と思わされた一冊。

350ページぐらいの文庫本です。 

 

海馬 脳は疲れない (新潮文庫)

海馬 脳は疲れない (新潮文庫)

 

 

以下お気に入りの箇所を備忘も兼ねて。

 

P19

痴呆のような病気を除けば、「歳をとったから物忘れをする」

というのは、科学的には間違いなんです。

物忘れやど忘れが増えると思えてしまう理由は、いくつかあります。

子供の頃に比べて大人はたくさんの知識を頭の中に詰めているから、

そのたくさんの中から知識を選び出すのに時間がかかる。

生きてきた上でたくさんの知識を蓄えたわけだから

これはもう仕方のないことと言っていいと思います。

ど忘れをしていてもその内容を誰かに言ってもらうと

「あーそれそれ。それを言いたかった」と分かりますよね。

つまりど忘れしている最中でも、その一方で脳は、

正解が何かもまたちゃんと知っているわけです。

 

それともう一つ、実は子供もたくさんど忘れをするんです。

重要なことは、子供はそのど忘れを気にしていない。

それが健全な姿だと思います。

 

P26

見て覚えるだけだと、大人と子供の間の成績にほとんど差はありません。

だけど、大人が書いて覚えると成績は100点近くになるのです。

大人の方がよくできた。

この結果は大人になっても記憶力が低下しないということばかりでなく、

大人になってから手を動かすことが、いかに重要かも示しています。

受け手ではなく送り手の立場に立つことになり、ただ単に見た図も、

自分の経験した記憶になります。

描きながら自分の知っている形に結びつけたり

連想を膨らませたりしているので、描いてみると分かりますが、

案外大人はすぐにこの図を覚えられるものなんです。

つまり、「経験してわかる」ことに関しては、

大人になってからの方が発達しているのです。

少なくとも脳の大切な機能のうちのいくつかは、

30歳を超えてからの方が活発になることがわかっています。

 

 

P25

大人はマンネリ化した気になってものを見ているから、

驚きや刺激が減ってしまう。

刺激が減るから、印象に残らずに、まるで記憶力が落ちたかのような

錯覚を抱くようになる。

生きることに慣れてはいけないんです。

慣れた瞬間から、まわりの世界はつまらないものに見えてしまう。

 

 

P32

一流と言われるような人で無口な人って、1人もいないんですよ。

全員がおしゃべりと言っていいですね。

それはきっと、物や人との結びつきを絶えず意識している力が

あるからだと思う。

 

例えば宗教の開祖は、みんな例え話の名人じゃないですか。

「お前例え話しかしないじゃないか」と言いたい位の、

例え話の洪水ですよね。

「お前はまだ、自分のコップの中の水を捨てていない。

 だから、私が今熱いお湯を注いでも何にもならない。

 まずは持っているものを捨てろ。」

このヨガの行者の話を読んだときにはうまい例えだなと感心したんです。

だけど、よく考えたら「奥義を伝えること」と「水とお湯の話」って

本当は違う話ですよね?

なのに、言った方も言われた方も納得しちゃう。

宗教の開祖とかってこういう技術が天才的だったんだろうなと

思うんですよ。

別のもの同士を結びつけるちゃう能力、それを納得させてしまう説得力。

 

 

P44

体が耐えられないほどの力を加えないために、

筋肉にも脳にも必ずストッパーがあります。

一方に伸ばす筋肉があれば逆側で縮む筋肉も働いている。

脳は人の吸収するエネルギーの20%〜30%を使っていますが、

それでも脳の能力は全体の2%しか使われていないとされていますので、

脳にも似たようなストッパーがあるのでしょう。

 

何かを進める時って、ストッパーを外す方法と、

前に進む力を伸ばす方法との2種類がありますよね。

人間の体を見ていると面白いんですけど、

ブドウ糖もそうやって作られているんですよ。

眠っているときには体が動かないからエネルギーをあまり使っていない。

だったらブドウ糖を作らなければいいのに、

絶えずブドウ糖10個作って10個壊していたりする。

これは無駄のように思えるんですけど、

急にブドウ糖のいるときには効きます。

必要なときには、10個作るところを20個に増やし

10個壊すところを5個壊すとしますよね。

そうすると 20個ー5個 で差し引き15個も増やせる。

 

P51

脳そのものは、さっき言ったように「無刺激に耐えられない」っていう

性質を持っている限り、本能的にはより刺激がある方に向かいますよね。

それは装置としてそう備わっているわけです。 

 

「人間あるところ宗教あり」なんです。

僕としては、宗教は「人間が関係性を欲しているから」

存在していると思っています。

何かに依存するという形で他人と交わったり話したりするといいますか。

 

人間だとなかなかできないんですけれども、猿なんかだと、

親から離して刺激も全然与えないで、

暗い小屋とかで人間からの刺激もないように、

餌も遠くからチューブで与えるとか、

そうやって育ってると・・・やっぱり長生きはしないです。

トロンとした顔で欲がなくなってしまう。

外に行くことを欲することすらなくなるのです。

 

 

P54

脳は30歳位から別の動きに入るようです。

新しいものにすんなり馴染める人と、

馴染めなくてそれまでの脳の使い方に固執して

芽が伸びないままの人との二極分化が起こるという・・・

30歳を過ぎるとつながりを発見する能力が非常に伸びるんです。

 

前に学習したことを生かせる能力というか。

一見関係のないものとものとの間に、以前自分が発見したものに近い

つながりを感じる能力は、30歳を超えると飛躍的に伸びるのです。

研究の中で脳を直接見ていると、20代が終わるところまでの状態で

脳の編成はだいぶ落ち着いてくるということが本当によくわかります。

30歳を超えると既に構築したネットワークを

どんどん密にしていく時期に入る。

「今まで一見違うと思われたものが実は根底ではつながっている」

ということに気づき始めるのが、30歳を超えた時期だと言われています。

 

 

P77

脳はいつでも元気いっぱいなんです。全然疲れないんです。

一生使い続けても疲れないですね。疲れるとしたら目なんですよ。

目の疲れだとか同じ姿勢をとった疲れを補うことの方が

実践的なわけです。